1.コクヨの「測量野帳」をご存じでしょうか。
株式会社福崎
代表取締役 福﨑 充
実は、この小さな手帳が60年以上も愛され続けるロングセラーだということを、私は現在の仕事をするまで知りませんでした。
手に取ってみると、長く愛される理由がすぐに分かりました。
初めて名入れをした測量野帳を手に取ったとき、「現場で使うために徹底的に考え抜かれた道具だ」と感じたのです。
- 硬い表紙で立ったまま書ける。
- ポケットサイズで収まりがよい。
- 丈夫な方眼紙で、屋外でも使いやすい。
- シンプルなデザイン。
レトロな雰囲気もあり、「これはいい」と素直に感じました。
コクヨによると、測量野帳は戦後復興期に急増した測量業務の現場の声をもとに、1959年に開発された商品です。幅広い商品を展開するコクヨの中でも、測量士という特定のユーザーに向けて開発された珍しい商品でした。
この測量野帳を前にして、私は「名入れ」の本当の価値とは何だろう、と改めて考えさせられたのです。
2.「気づいたら”ヤチョラー”がいらっしゃった」
測量野帳の愛好者を「ヤチョラー」と表現し、愛用者コミュニティがあるようです。
面白いのは、コクヨが作ったマーケティング用語ではなく、ユーザーの間から自然に生まれた呼称だという点です。 つまり、文具好きやアウトドア愛好家などが自然に測量野帳を使い始め、その文化が広がったという経緯です。
これはブランド論として、とても興味深い事例だと思います。
商品がユーザーの期待に応え続けた結果、ファンが自ら名前を持つコミュニティになった。
ブランドとは、企業が「作る」と思いがちですが、本当はお客様が「育てる」ものなのかもしれません。
3.私たちが測量野帳に「名入れ」して実現したいこと。
私たちは、完成された測量野帳に名入れを施すことで、何を実現したいのでしょうか。
その答えの中に、私たちのブランドの本質があると考えています。
もう少し掘り下げると、「野帳に名入れする」目的に段階があります。
レベル1 会社名を知ってもらう
一般的なノベルティです。
「○○株式会社」
と印刷して認知を広げる。
レベル2 思い出を持ち帰ってもらう
展示会やイベントなら、
「この会社と出会った記憶」
を持ち帰ってもらうことです。
レベル3 企業の価値観を持ち歩いてもらう
測量野帳は長く使われます。だから名入れは広告ではなく、
その会社らしい価値観を、毎日使う道具に宿すことです。
例えば、
| 業界 | 測量野帳に込める価値 |
|---|---|
| 運輸会社 | 一つひとつの記録が、安全な未来をつくる。 |
| 建設会社 | 現場の記録が、街の未来をつくる。 |
| 鉄道会社 | 今日の点検が、安心・安全の運行を支える。 |
| 製造業 | 品質は、正確な記録から始まる。 |
| 環境企業 | 今日の記録が、未来の地球を守る。 |
| 株式会社福崎 | つながりを、記録する。未来へ、つなげる。 |
企業の価値観は、日々使う道具を通して、少しずつ伝わっていくのではないでしょうか。
レベル4 行動を変える
測量野帳は「書く」ことを促す道具です。
AIやDXが進化した今でも、日本企業の強みは現場にあります。
そして、現場力を高める第一歩は、気づきや改善を記録することではないでしょうか。
- 気づきを書く
- アイデアを書く
- 現場を記録する
- 改善を積み重ねる
測量野帳には、そんな社員一人ひとりの行動を変えるきっかけがあります。
現場力を高める企業文化を育てるうえでも、測量野帳は大きな可能性を持ったツールだと考えています。
だからこそ、私たちは測量野帳を単なる文具ではなく、企業の想いや価値観を現場で育てるブランドツールとして提案したいのです。
最後に
4.測量野帳は、現場仕事を象徴する文具です。
しかし、考え方を変えれば、お客様の企業理念や想いを持ち歩く道具にもなります。
「良い仕事は、まず現場で、記録することから始まる。」
私自身もその考えから、測量野帳を持ち歩き、会議やお客様との打ち合わせで気づいたことを、その場で書き留めるようにしています。あとで見返すと、その小さな気づきが改善や新しい提案につながることが少なくありません。
現場で積み重ねた小さな記録が、やがて企業の価値を育てていく。私はそう信じています。
このように、測量野帳は単なるノートではなく、企業の想いを日々の仕事の中で伝え続けるツールにもなり得ます。
私たちは、その一冊が企業の想いを伝え、社員やお客様とともにブランドを育てる存在になることを願い、一つひとつ丁寧に名入れを施しています。
ブランドとは、企業が一方的につくるものではありません。社員やお客様が日々使い、共感し、価値を積み重ねることで育っていくものです。
だからこそ、測量野帳は60年以上にわたり愛され続けるロングセラーになったのでしょう。
ブランドとは、企業がつくるものではなく、人に育てられるものなのだと改めて感じました。
あとがき
私は測量野帳を知ってからというもの、いまではすっかり「ヤチョラー」の仲間入りです。
先日も、あるお店で測量野帳専用のカバーを見つけ、思わず購入してしまいました。
AIの進化によって、感動を消費するスピードがますます速くなる時代だからこそ、私は一冊の測量野帳を手にし、その場で感じたことを手で書き、考えを整理する時間を大切にしています。

以上
